性的興奮に特化した小説を「官能小説」と呼びますが、この官能小説がirohaと程よくマッチするのだそうです。これまでの官能小説のほとんどが男性目線のものばかりでした。
しかし最近では女性読者や女性作家が増えており、女性作家による女性向けの官能小説というものも増えてきているようです。そこでこちらでは、irohaとの相性が良いと評判の女性向けの官能小説を3つご紹介しております。
目次
恋人/松崎詩織
発売日 | 2010年6月10日 |
作者 | 松崎詩織 |
ページ数 | 280ページ |
出版社 | 幻冬舎 |
価格 | 710円 |
気がつくと激しく舌を絡めあっていた。唇を離す度、身体の芯を甘美な刺激が突き抜け、再び求めあう。部長職にある神崎太一が、隣部署のOL美奈と二人で会った二度目の夜のことだった。「ああっ、私どうしたらいいんですか」「君は俺に押し流されてくれればいい」。妻子ある中年男と恋人がいる若い女の淫猥な純愛を描く、禁断の傑作官能小説。
【本書より抜粋】美奈のまるで少女のような初々しい反応に神崎は感動を覚えた。
性器の裂け目に置かれた中指を動かすことはしない。そっと触れたまま、その体温と潤みを指先で感じることにする。
「変なことはしないから、もう少しこのままでいさせてくれないか」
「もう、十分に変なことしてますよ」
そう言いながらも、美奈が身体から力を抜くのがわかる。神崎は美奈の首筋にそっとくちづけた。
「はぁぁっ」
美奈の溜息がタクシーの車内に溢れていく。「一緒に飲みませんか?」
神崎太一の目の前に、相沢美奈が立っている。柔らかで透明度の高い清流のように澄んだ声だと思った。
まるで穢れを知らぬ天使のような愛くるしい笑顔が真っ直ぐに向けられる。眼鏡の奥で揺れるアーモンド色の瞳で見つめられただけで、なんだかその無垢な心を覗き見してしまったような申し訳なさを感じさせられた。
神崎は思わず見惚れてしまう。自分の鼓動が高鳴るのをはっきりと自覚した。体温が急上昇する。
戸惑う神崎の目の前で、美奈が照れた顔でぎこちなく微笑んでいる。
妻子ある中年男と恋人がいる若い女との純愛が描かれた作品です。ダブル不倫の関係でありながら、激しくお互い愛し合っている2人のお話です。
日常ではありえないシチュエーションでみだらに求め合うシーンは作者が得意とするところです。官能的なシーンが多い恋愛小説ですが、どこか切なさも感じられる作品ではないかと思います。
指づかい/うかみ綾乃
発売日 | 2011年2月9日 |
作者 | うかみ綾乃 |
ページ数 | 309ページ |
出版社 | 幻冬舎 |
価格 | 660円 |
打ち寄せる快楽の苛烈さに、灯子は全身をよじらせ身悶えた。彼女が愛するカメオを彫る岳生の繊細な指は、溢れだす愛液を絡め取りながら、激烈な快感を刻み込んでくる。「欲しい…」。喘ぎながら訴えた。「まだだよ。もっと灯子の肉体を苛めたい」。カメオ職人の瀬能岳生と、彼に惹き寄せられた女たちの、切なくて狂おしい情交を描く長篇官能小説。
【本書より抜粋】ゆうべの男は灯子の性癖をすぐに見抜いた。セックスの最中だけはサディスティックな扱いを好む灯子だった。言葉の選び方ひとつ、責め方、可愛がり方ひとつとっても申し分なかった。性器のみではないあらゆる箇所で、数えきれないほどの絶頂を迎えた。
だが今朝は申し訳程度に肉体をシャワーで流したら、水滴を拭くのもおざなりにホテルを出てきた。男が寝ている間にさっさと部屋を出たかった。
どんなに夢中になるセックスをしようと、翌朝になればこうして白けた気持ちになるのだった。「久しぶりね」と、灯子が先に言う筈だった。だが男の方がこちらを振り向き、笑った。「久しぶり」
「相変わらず、シェルカメオを掘っているのね」
男は灯子が10年前に別れた夫、瀬能岳生だった。
10年ぶりに再会した元夫を前に、心の奥でざわめくものがあるのも確かだった。この10年間、この男を思い出す夜は数えきれないほどあった。
カメオ職人・瀬能岳生をめぐる女性たちのお話です。岳生に惹きよせられた女性たちの切ないけれど、時に狂おしいほどの情交が描かれています。岳生の指づかいが感情とは別の部分で反応する女性たちが、作者独自の言葉で書かれています。
年上の女(ひと)/藍川 京
発売日 | 2004年10月1日 |
作者 | 藍川 京 |
ページ数 | 266ページ |
出版社 | 幻冬舎 |
価格 | 545円 |
高校一年生の弘樹はその水着写真を何度も盗み見た美しい人、母の妹・千詠子のマンションを訪れた。熟れた全裸で誘惑する千詠子に弘樹は抑えていた激情を止められない。「叔母さん、好きだ」千詠子も甥の若々しい欲望に応え一心不乱に刺激を送り込んだ。かくも甘美な感触。「叔母さん。素敵だった」「ありがとう。今度はあなたの番。さあ…きて」
【本書より抜粋】学校から帰って2階の勉強部屋へと入ると、机の引き出しにこっそりと仕舞ってある叔母の写真を弘樹は真っ先に出してみる。写真の中の水着姿の叔母は、サングラスをかけ、大きい白いイヤリングをつけて笑っている。
長い脚も引き締まった踝も、ちょっとだけ左足を引いて脚線を美しく見せるポーズも、叔母の美しさを最大限に引き出していた。写真に写っている叔母の碓井千詠子は母の妹だ。29歳。独身で行動的で、まだしばらくは20代にしか見えないだろう。服飾デザイナーとして活躍し、「CHIEKO」という事務所を銀座に持ち、スタッフをかかえている。
ぶ厚い写真の束を持ってきた千詠子が、友人とオーストラリアに行ったときの土産話をしていったのは3ヶ月も前のことだ。
弘樹はほんのわずかの隙を逃さず、気に入った1枚を抜き取ってポケットに入れた。その1枚が消えたことに、千詠子はいまだに気づいていないだろう。
日常では絶対にあり得ないシチュエーションで描かれた作品です。美しすぎる若い叔母の千詠子は思春期真っ盛りの弘樹にとって、とても身近な美しい年上の女性。
弘樹の想いはわからなくもないのですが、まさかの千詠子の反応は官能小説ならではの展開ともいえます。美しい叔母と思春期の若者とのあってはならない純愛小説です。
まとめ:非日常を妄想する
官能小説は日常ではあまり起こりそうもないシチュエーションでのセックスや恋愛が、あたかも普通のように描かれている場合がほとんどです。
官能小説は官能を刺激することを前提に書かれているため、その内容があまり現実的でない場合であっても、それが普通であるような錯覚を読者へ提供しています。
官能小説は独特の魅力的な表現や官能的な言葉が多数使われていますが、これを自身の恋愛やセックス感と重ね合わせながら妄想することも、irohaを楽しむ方法の1つとなるかもしれません。
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